前回の記事で障害者グループホーム(以下、GH)での暮らしがどのようなものか、少し書いた。私は実家→入退院の繰り返し→GH→一人暮らし、と生活の場を移してきた。障害者となってからは、主にGHと一人暮らしの形で生活している。他にも、実家含む身内や友人の家、シェアハウス、長期入院、入所施設など色々な場所があるだろう。どこで暮らすにしてもメリット・デメリットはあるが、私の背景と価値観で、GHと一人暮らしについて、どう感じているかについて書いてみようと思う。
メリット・デメリットの比較
私の経験や一般論として以下のような特徴があると考える。
障害者グループホーム | 一人暮らし | |
---|---|---|
費用 | 国や自治体からの補助があることも多く、総額を抑えやすい ・サービス利用料はかかった額の 1割負担(上限あり)ただし、 それと家賃や食費の実費は別。 ・低所得者に対しては特定障害者 特別給付費として国から月1万 円の補助が出る。 ・その他、自治体ごとにさらに助 成があるところがある(例えば 横浜市では月35000円) | 初期費用も毎月の費用も補助がないので高い (ただし、家賃の安い公営住宅への優先入居権、所得に応じた家賃補助制度、生活保護による住宅扶助などがある場合がある) |
安心感 | ・病気や障害があることを前提に 住める ・夜間不安になったり、問題が起 きたりした時に、相談したり対 応したりしてくれるスタッフが いる場合もある ・良い関係が築けた場合、他の利 用者との団らんができる | ・病気や障害のことを大家や不動 産に知られると、不利に働くこ とが多い(法律上は障害を理由 に入居を拒否することはできな いが、現場ではまだまだ偏見が 残る) ・夜間に不安になったり、問題が 起きたりした場合、すぐに対応 することが難しい |
プライバシー | ・職員が合鍵を持っており、落ち 着かないと感じる場合もある ・他の利用者との共同生活のた め、どうしても知られたくない ことを知られてしまう場面も ある | 完全に一人の空間を保つことが できる |
支援 | ・細かいルールが決まっている居 宅介護ではできない支援等も受 けられる可能性がある(草むし り、家族の分の家事など) ※居宅介護ではサービス提供時間 が厳格に決まっていること、個 別支援計画に記載されている内 容以外できないため、即座に柔 軟に支援内容の変更に対応する ことが難しい可能性がある | ・他の利用者の状況に影響される ことなく、自分の障害支援区分 に応じた居宅介護等の障害福祉 サービスが受けられる(支援者 が自分のために時間をとってく れる) ・ヘルパー不足もあり、受けられ る権利の分支援が受けられると は限らない |
ストレス | ・集団生活のストレス (ルール面、他の人に影響を受け る) | ・隣人トラブルや地域の一員とし てのことも全て自分で(支援者 の力も借りつつ)対応しないと いけない |
結局どちらが良いのか
今回はGHと一人暮らしで比較を行ったが、もちろんどちらが良いということはない。
ただ言えることは、どちらにもメリット・デメリットはあるが、大事なのは最終的には(他の人のアドバイスや情報をもらいながらも)自分はどうしたいのか、自分で決めることだと思っている。
実際問題としては、近くに空いているGHがあるのか、来てくれるヘルパーさんがいるか、家族との関係はどうかなど、色々なことで実現可能の度合いは変わってくる。それでも、スタートは自分の意思だと思う。
さらに、どこで暮らすかはもちろん重要ではあるが、暮らしの場所は「送りたい人生を送るための一要素」でしかないとも考えている。「どのような人生を送りたいか」から逆算して住まいも考えるのがよいと思う。
ちなみに私の場合は「二度と入院したくない。いつでも外の空気を自由に吸える環境で暮らしたい」ということが、自分の中で譲れない軸としてあった。私はどうしても他人に影響されやすく、一人でいるほうが調子良く、心身を健康に保てるとわかった。ただ、それは孤独とのトレードオフでもある。どれもおいしいところ取りなんていうふうにはいかないけれど、自分の人生のハンドルは自分で握る。年を重ねるごとにそう強く思う。
もちろん、ハンドルは切りなおすこともできる。GHから出るのは中々にパワーのいることだったけれど、沢山の人の力を借りて実現した。よく考えること、そして自分で決めること。ただ選びなおす、やり直すこともできる。だからこそ、恐れすぎなくてもいい。このバランスは、難しいけれど大事だなと切に思う。