自己理解・診断

初めてのオンラインカウンセリング体験記

少し前の話ですが、個人的な事情で精神的に参っていた時期がありました。
いつもなら気の置けない友人たちとゲームをしたり、家族と話したり、気分転換に出かけたりしてそれなりに落ち着くのですが、その時はどうにもモヤモヤが収まらず、仕事も趣味も手につかなくなり、食欲不振や不眠の症状が少しずつ出始めました。

上司からは「病院に行った方がいい」と言われたのですが、これまで心療内科や精神科には行ったことがなく、そもそも今の自分が病院に行かないといけないほどの状態だという自信もなく、二の足を踏んでいました。

そんな時に「オンラインカウンセリング」というサービスを知りました。病院に行くよりは気軽だし、オンラインで受けられるなら一度試してみてもいいのかもと思い、軽い気持ちで利用してみました。結果、かなり充実した時間を過ごすことができ、「1回きりの利用のつもりだったけれどリピートもアリかもしれない」と思うようになりました。

「カウンセリング、興味はあるけど…」「大した悩みもないのにカウンセリングなんて大袈裟かも?」と悩んでいる方の参考になればと思い、私の体験記をお話ししたいと思います。

利用前に気になったポイント

インターネットで検索してみると、「オンラインカウンセリング」「オンライン診療」のキーワードでたくさんのサービスがヒットします。利用にあたって、私が考えたのは以下の4つです。

①診断書が欲しいのか?とにかく話を聞いてほしいのか?

オンライン診療が受けられるサービスの場合、診断書の発行をしてくれる場合があるそうです。私の場合、食欲不振や不眠など身体症状も出てきてはいたものの、治療や診断が必要なレベルなのかはよくわからない状態だったので、まずは「とにかく話を聞いてほしい、そのうえで診察が必要か考えたい」と思い、オンラインカウンセリングを選びました。

②どんな人に相談したいのか?

今回使用したサービスには、臨床心理士やキャリアコンサルタント、産業カウンセラーなど、さまざまな肩書を持つカウンセラーが多数登録されていました。今回は自分の置かれた状況や悩みの内容を踏まえて、精神保健福祉士・社会福祉士の資格を持つカウンセラーさんにお願いすることにしました。

電話相談窓口だと「どんな相手が出るのかわからない」という不安もあると思うのですが、カウンセラーの経歴や資格を見て「この人にお願いしよう」と自分で相手を選べるのも、こういったサービスの嬉しいポイントだなと思います。

③費用は?

今回私が利用したサービスは1回45分で5000円程度でした。サービスや相談相手によって多少金額の違いがあります。また、上述したオンライン診療で診断書を発行してもらう場合は追加料金が発生するケースもあります。一方で、診療ならば保険適用ができるという場合もあるようです。

④自分のプライバシーは確保できるか?

カウンセラーの守秘義務はもちろんサービス側で担保されていますが、私が気になったのは同居する夫のことでした。自宅からZoomで参加するので、喋っていることが夫に筒抜けになると、私も話しづらいし、夫にも心配をかけそうだなと思ったのです。
カウンセリングを検討し始めた頃に、ちょうど夫が遠方への出張で不在にする日があったので、その日に決めてカウンセリングを予約することにしました。

オンラインの診察やカウンセリングは、深夜の時間帯でも予約できるサービスも多いので、病院などが開いている時間帯にはなかなか動けない…という人にもおすすめです。個室のテレワークブースなどを活用するのも一つの手かもしれません。

カウンセリング当日、45分間で得られたもの

定刻、機材のセッティングをしてZoomに参加し、まずは自分の状況や思いを伝えていきます。事前アンケートで自分に起こっていることは簡単に記載していたものの、具体的に話そうとすると、うまくまとめられなかったり、時系列が前後したりして、長々と拙い話をしてしまいました。
つらかったことを思い出して言葉に詰まったり、泣いてしまったりもしましたが、カウンセラーさんは終始柔らかい表情で、真剣に聞いてくださいました。その姿勢を見ているうちに、「安心して話せそうだ」という気持ちが少しずつ芽生えていきました。

話を進めていくうちに、自分が「脳の中でありとあらゆる最悪の状況をひたすらシミュレーションし、実際に起こるかどうかわからないことを延々と想像して、自分でどんどん不安をふくらませている」という状態にあることに気がつきました。
このことを伝えると、カウンセラーさんから「このぐるぐる思考は自分がやりたくてやっていることなのか?」をまず自問してみて、もし違うなら「あと3回は考えてもいいけど今日はそれ以上考えない」「あと10分やったら今日はもう考えない」など、具体的な回数や時間を決めて思考を止める練習をしてみてはどうか、と提案されました。

さらに驚いたのが、カウンセラーさんの方から「普段、合理性とか関係なく純粋に『やりたい』と思ってやっていることってありますか?」と聞かれたことでした。
話し方や会話の内容から、合理性や効率を重視する私の性格を見抜いたうえで、「やりたいこと」を「やるべきこと」にすり替えてしまう癖があるのでは?と思ったのだそうです。
言われてみると、趣味でやっていることも「仕事に役立つから」「記事のネタにできるから」「スキルアップの一環」という側面があるものばかり。「損得関係なくやりたいからやる」と思っているものはほとんどないことに気づかされました。
最後に、「たとえば『コンビニで食べたいおやつを買った』とか、小さなことでもいいので『自分のやりたいことができた、よかった』と思える機会を増やしていけるといいですね」という温かな言葉を掛けていただきました。

45分間という短い時間でしたが、少し視界が開けたというか、「自分のために自分でできることが見つかった」と思える、充実した時間でした。悩みがあるとき、家族や友人に話して「すっきりした」で完結することも多いですが、カウンセリングはそのもう一歩先に踏み込んでくれた印象がありました。
話しているその場で自分の状況に気づくこともあれば、専門家だからこそ見える盲点を教えてもらえることもある。このような多面的な気づきを得られるのは、カウンセリングならではの価値だと感じました。

「喋ってすっきり」の一歩先へ進む手助けとして

実際にカウンセリングを受ける前は、継続するつもりはなく、この1回きりで十分だろうと思っていました。でも、話しているうちに自分の課題点に気づいたり、自分ではわかっていなかった思考の癖と対処のヒントを提示してもらえたりしたことで、「定期的に受ければ、もっと自分のことを深く理解できるようになるのかも」と考えるようになりました。

「カウンセリング」というと、心身に重い課題を抱えた人が受けるものというイメージを持つ人も多いと思います。しかし、今回オンラインカウンセリングを受けてみて、深刻でなくても、具体的でなくても、一旦気持ちを整理したい時や誰かに相談したい時の選択肢として、結構「アリ」なんじゃないかなと感じました。
オンラインなら時間や場所の融通がかなり利くというメリットもありますから、「ちょっとモヤモヤしている」という人も、一度利用してみるとよいのでは?と思います。

ABOUT ME
1992年生まれ。教材編集や大学での語学学習支援に携わってきた経験あり。 趣味はカメラ、樹脂粘土、人工言語「Toki Pona」。