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ワーキングメモリが弱い私の「忘れない」ための工夫

私が精神疾患にかかって15年以上が経つ。病気の影響か薬の影響かはわからないが、「起きあがってあれしよう」「今聞いた話をメモしよう」と思っても、いざ動こうとすると何をするか思い出せないような、ワーキングメモリの低下をひしひしと感じるようになった。これは数年前に行った心理検査の結果にもはっきりと現れており、その結果の説明にも「以前は難なくできていたことも機能低下しており、本人もやりづらさや不全感を抱いているはず」と書かれていた。書かれている通り、私は覚えていられないことに困っている。
覚えられないことそのものも苦しいが、「ちゃんと話聞いててよ」「約束すっぽかして無責任な人」など、人からの信用を失ってしまうこともつらく、大きな問題である。

そこで、私はどうにかできないものかと考えた。私が導き出した結論は「自分の脳に頼ることは諦める。モノや技術を外部記憶装置として活用しよう」ということだった。この記事では2つのツールを紹介したいと思う。

対策1: 自分の脳を信じることを諦めて、モノや技術を活用する

LINE友だち リマインダーbot「リマインくん」

リマインくんに「Aさんに4/18 朝10時に電話をかける」ミッションを覚えてもらっている筆者(筆者撮影)
リマインくんにミッションを覚えてもらう(筆者撮影)

ひとつめは「リマインくん」だ。LINEのbotアカウントでお友達に追加しておいて、リマインドしてほしい事柄と日時を伝えると、その時間にメッセージをLINE経由で送ってくれるものだ。

例えば「Aさんに4/18日の朝10時に電話をかけることを思い出させてほしい」とき。(画像参照)まずは「Aさんに電話をかける」というリマインドしてほしい内容を送る。そうすると「いつ教えてほしい?」とリマインドを送る日時を聞いてくれるので、「4/18日の朝10時」と伝えればOK。指定した時間になるとリマインドが送られてくれる、という感じ。LINEは日常的に使っているツールなので、使い始めるにあたってのハードルは圧倒的に低い。しかも面白いのが、内容に「焦らないで」なんてコメントまでつけてくれるところだ。ちょっと人間味があって、癒される。ただ、一点注意したいのは、botなのに数分通知が遅れることがあるというところだ。大事な用事の場合は、念のため数分早めに設定するか、複数回設定するのがおすすめだ。

ウェアラブルメモ wemo

他の部屋から取ってくるものを忘れないためにwemoに書いて腕に装着している筆者(筆者撮影)
他の部屋から取ってくるものを忘れないためにwemoを活用(筆者撮影)

「いつでもどこでも かける おもいだせる」をコンセプトに腕に装着できて、ボールペンで書き込めて、かつ簡単に消しゴムやアルコールで文字を消して何度でも使用できるウェアラブルメモ「wemo」も愛用している。

腕にくるんと巻き付くリストバンドになっていて、普段は私はベッドサイドにボールペンと一緒に立ててある。(もっと言うと、私のベッドサイドははさみも割り箸もリモコンも何でもベッドから手が届く超便利仕様に仕上がっているのだが、それはまた別の機会に…)ベッドから起き上がって、ちょっと隣の部屋まで行って物を取ってきたい、、冷蔵庫の在庫チェックしてきたい、そういった小さいことも書いてから行動しないと、起き上がった時には忘れてしまうので、横になった状態で腕にwemoを装着し、メモする。

そして、立ち上がってメモに書いてある用事を済ませ、場合によってはメモを書き足してベッドに戻ってくる。そして全て終わったら消しゴムで文字を消して、元の位置に戻す。これが私のwemoの活用方法だ。

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対策2: 適度に他者の力を借りる

 物や技術を使って忘れないようにするのは重要なことである。その上で、周りの人に自分がワーキングメモリが弱く、物事を覚えにくいこと、忘れやすいことを知っておいてもらうい、大事な用事や約束については可能な範囲でリマインドしてもらうよう協力してもらうこともひとつの方法だと考えている。私の場合、自分の苦手を知っておいてもらうことで緊張感が減って、安心できるというメリットもある。

 伝える相手によって病気の影響であるということを言うか言わないかは変えているが、「ごめんなさい!私、本当に忘れっぽくて、自分でもリマインダー設定してるんだけど、あの日一緒にご飯行く約束について、前日の夜くらいにLINEしてくれる?そうすると本当に助かる…お手間かけて申し訳ない」というようなことはなるべく伝えるようにしている。
ただ、いくら自分のワーキングメモリが弱いことが検査結果からわかるようなものであっても、「だから迷惑をかけても許してね」とは全く思っていない。手助けしてもらったことにはしっかり感謝して、かつ、もし迷惑をかけてしまった際にはきちんと謝るようにしている。何より大切なのは、苦手をたくさん持つ自分とも他者ともうまくつきあいながら、社会生活を円滑に送ることだから。

まとめ

 「忘れっぽい」という特性を抱えながら生きていくうえで最も大事なのは、忘れないことではなく、忘れても困らない仕組みをつくることだと私は考えている。とはいえ人間なのでうまくいかないこともあるし、記憶力に脳の機能として問題がない人でもミスすることはいくらでもある。この記事で紹介したアイテムは誰にとっても便利だし、そういう意味では一人で抱えなくて良いのかもしれない。できるだけ工夫したうえで、思うようにはいかない自分をゆるしつつ暮らしていきたいと、私も日々模索しているところである。

ABOUT ME
1992年生まれ。公衆衛生学と社会福祉学を学んだ、精神障害当事者ライター兼リサーチャー。隔離・拘束を含む10回以上の入院や障害者グループホームでの5年半の生活の経験を通じて精神科医療や障害福祉について考えたこと、日々の暮らしの幸せや工夫などについて思いを綴っている。